2026年2月11日、1年にわたる欧州拠点の世界旅がいよいよ幕を開けました。

最初の滞在地として選んだのは、長期滞在先となるアイルランドへ向かう前の中継地であり、「ヨーロッパの十字路」と称されるベルギー。EUやNATOの本部が置かれたこの国は、フランス、オランダ、ドイツ、ルクセンブルク、そして海を隔てたイギリスといった隣国の文化が複雑に溶け合い、独自の輝きを放っています。

特に印象的だったのは、この小さな国の中に存在する「二つの顔」です。公用語が3つあるベルギーは、北部のフランドル地方と南部のワロン地方で、驚くほど雰囲気が異なります。

オランダ語が話される北部のフランドル地方(ブルージュやアントワープなど)は、どこか質実剛健で洗練された北欧のような空気感が漂います。一方で、フランス語圏である南部のワロン地方へ足を踏み入れると、人々の気質も街の色彩も一気にラテンの華やかさと柔らかさを帯びる。このコントラストこそが、ベルギーを旅する醍醐味と言えるでしょう。

その違いを肌で感じたのが、ルクセンブルクへ向かう途中に立ち寄ったリエージュの街でした。これまで巡った4都市の「絵に描いたような中世の街並み」とは一線を画し、街の色が違います。ワロン地方特有のどこか重厚で無骨な、工業都市としての歴史を感じさせる情景が広がっていました。

今回の6泊7日の滞在では、首都ブリュッセルを拠点に、王道と美食のブリュッセル、中世の面影を色濃く残す水都ブルージュ、知性とセンスが光るアントワープ、そして夜景が美しい生きた古都ゲントの4都市をじっくりと巡ってきました。

小さな範囲に多様な世界が点在し、日帰り旅でそのすべてを味わえてしまう。そんなベルギー周遊の旅を、私が見た景色とともにご紹介します。
旅のスケジュール
今回のベルギー旅のスケジュールは、「ブリュッセルを拠点にすべて日帰りで回る」というスタイルに落ち着きました。ベルギーは都市間の距離が非常に近く、鉄道とバスを賢く使い分ければ、重い荷物を持って移動し続ける必要もありません。

交通手段の使い分けには、ちょっとしたコツがありました。ベルギーの鉄道には、金曜の夜から日曜にかけて運賃が大幅に割引される「週末割引(Weekend Ticket)」という制度があるんです。これを利用しない手はありません。私はあえて土日に合わせて、鉄道を利用するブルージュやゲント、そして少し足を伸ばしてルクセンブルクへの旅を組み込みました。

一方で、平日の移動には欧州の格安バス「FlixBus(フリックスバス)」をフル活用。信じられないほどの格安料金でアントワープまで行くことができ、交通費を劇的に抑えることができました。フリックスバスが使える路線はバスで、それ以外は鉄道の割引を狙う。このハイブリッドな戦略が、ベルギー周遊の正解ルートだと思います。

実際のスケジュール感ですが、効率よく回ればブルージュとゲントの2都市を、ブリュッセルから1日で一気に攻略することも十分に可能です。どちらもコンパクトな街なので、朝から夕方まで駆け抜ければ、中世の街並みを存分に堪能できます。
ただし、注意が必要なのがお隣の国、ルクセンブルク。地図で見ると近く感じますが、ブリュッセルから往復するには想像以上に距離があり、移動だけでかなりの時間を要しました。ルクセンブルクについては語りたいことが山ほどあるので、また別の記事でじっくりまとめたいと思いますが、日帰りで行くなら気合が必要!ということだけは先にお伝えしておきます。
| 日付 | AM | PM | 宿泊地 |
|---|---|---|---|
| 2月11日(水) | 成田空港T110:10発 | ブリュッセル空港16:30着 | ホリデイインブリュッセル エアポートby IHG |
| 2月12日(木) | アントワープ観光 | アントワープ観光 | ホリデイインブリュッセル エアポートby IHG |
| 2月13日(金) | ブリュッセル観光 | ブリュッセル観光 | ホリデイインブリュッセル エアポートby IHG |
| 2月14日(土) | ブリュージュ観光 | ゲント観光 | ホリデイインブリュッセル エアポートby IHG |
| 2月15日(日) | ルクセンブルク ※別記事で紹介 | ルクセンブルク ※別記事で紹介 | ホリデイインブリュッセル エアポートby IHG |
| 2月16日(月) | 休息日 | 休息日 | ホリデイインブリュッセル エアポートby IHG |
| 2月17日(火) | ブリュッセル → アムステルダム |
旅費・ホテル代・交通費など
今回のベルギー旅では、大きな出費を絞ることで驚くほどコストを抑えることができました。食費などは除いた主要な旅費のまとめですが、合計金額は71,942円(+11,250マイル)となります。
食費や雑費なども含めた総費用で考えると、78,351円でした。

この驚異的な安さは、やはりマイルの圧倒的な影響力です。ANAの減額マイルキャンペーンを利用したことで、成田からブリュッセルまでの国際線航空券を実質3万円弱の諸費用のみで手に入れられたことが最大の勝因でした。

また、宿泊に関しても、2人で1部屋を利用して折半をしていることもありますが、6泊という長期間ながらホテル代を約3万3千円に抑えられたのも非常に大きかったです。
実質的には、宿泊によってANAマイルに還元可能なIHGのポイントを1,107マイル(宿泊料金1USDにつき、3マイル分)貯めることができたので、それも含めればもっと安くなりますし、この値段で朝食も付けられていました。

現地での移動についても、安価なFlixbusやベルギー国鉄(SNCB)を効率よく組み合わせ、必要な交通費だけを計上しました。円安や現地の物価高に直面しながらも、マイルやポイントを賢く活用し、大項目での出費を最小限に留めることで、限られた予算のなかでも充実した周遊旅を実現することができました。
| 用途 | 詳細 | 費用 |
|---|---|---|
| 飛行機(ANA) | 成田→ブリュッセル エコノミークラス特典航空券 | 11,250マイル+28,110円 |
| ホテル(朝食付) | ホリデイインブリュッセルエアポートby IHG(6泊) | 33,224円 |
| バス(Flixbus) | ブリュッセル空港⇄アントワープ市内 往復 | 1,121円 |
| バス(Flixbus) | ブリュッセル空港→スキポール空港 | 2,250円 |
| 鉄道(SNCB) | Diegem駅→ブルージュ駅 | 2,408円 |
| 鉄道(SNCB) | ブルージュ駅→ゲント駅 | 1,076円 |
| 鉄道(SNCB) | ゲント駅→Diegem駅 | 1,551円 |
| 入場料 | アントワープ聖母大聖堂 | 2,202円 |
| 合計 | 71,942円 + 11,250マイル |
※ホテル代は2人で利用したため、金額を半分して1人分の実費で計算しています。
フライト・ラウンジ
フライトスケジュール
今回のベルギーへの旅は、ANAの成田発直行便でブリュッセル空港へ向かうところから始まりました。

特筆すべきは、ANAの「減額マイルキャンペーン」を利用したことで、わずか11,250マイルに燃油・諸費用28,110円という驚きの安さで航空券を手に入れられたことです。現在の国際線運賃を考えると、これほどお得に欧州へ飛べる機会は滅多にありません。マイルを貯めていて本当に良かったと実感しました。


当日の実際の航路は、現在の情勢により、北極圏を経由する北回りルートで成田からブリュッセルへと向かいました。

長時間フライトではありますが、窓の外には幻想的なオーロラや、見渡す限りの氷の世界が広がるグリーンランドの絶景が現れ、一瞬たりとも飽きることがありません。

実は私にとって今回が初めての日系航空会社の国際線搭乗だったのですが、そのホスピタリティの素晴らしさには感動しました。CAの方々のきめ細やかな心遣いはもちろん、機内食も驚くほどクオリティが高く、機内での時間は終始快適そのものでした。

到着したブリュッセル空港では、この場所が持つ歴史と緊張感を肌で感じる出来事がありました。過去にテロの標的となったこともあるためか、空港内の警戒態勢は非常に厳重です。

滞在中、スーツケースの不審物が放置されるという場面に遭遇したのですが、瞬く間に規制線が張られ、現場が封鎖されました。結果的に何事もなかったようですが、徹底した危機管理の姿勢を目の当たりにし、平和な旅の裏側にある強い警戒心を再認識させられる体験となりました。
| 日付 | 航空会社 | 便名 | フライト | 搭乗時間 |
|---|---|---|---|---|
| 2/11(水) | ANA | NH231 | 成田T1発10:10→ブリュッセル着16:30 | 14時間20分 |
成田T1プライオリティパスラウンジ「I.A.S.S Superior Lounge -NOA-」
出国前のひとときを格別なものにしてくれたのが、成田空港第1ターミナルにある「I.A.S.S Superior Lounge -NOA-」でした。

プライオリティパスを所持して、日本の本格的なラウンジに足を踏み入れるのは今回が初めての経験。これから始まる1年間の世界旅を前に、日本のクオリティを再確認する素晴らしい機会となりました。

ラウンジ内は非常に落ち着ける雰囲気ですが、利用したのが出発ラッシュの重なる朝の時間帯だったこともあり、ラウンジ内はかなりの利用者で賑わっていました。それでも、提供されるサービスの充実は目を見張るものがあります。

特に嬉しかったのが、食事メニューの豊富さです。うどんやそば、カレー、お味噌汁といった定番の日本食を、カウンターでオーダーしてから一つひとつ丁寧に作ってもらえるシステムになっています。出来立ての温かい料理を味わえるのは、これからしばらく日本を離れる身にとって、この上ない「最後の晩餐」となりました。

「これぞ日本のラウンジ」と感じさせるおもてなしと充実した食事のおかげで、フライト前に心もお腹も満たされる最高の出国になりました。成田から旅立つ際は、ぜひまたリピートしたいと思えるお気に入りの場所です。
ブリュッセル空港 シェンゲン圏外エリア「The View Lounge」
ベルギー旅の締めくくりに訪れたのは、ブリュッセル空港のシェンゲン圏外エリア(ゲートB)にある「The View Lounge」でした。これから長期滞在先のアイルランドへ向かう私にとって、出国前の貴重な休息の場となりました。

欧州の物価高に記録的な円安が重なる今の時代、プライオリティパスを使って無料でお腹を満たせるのは、旅人にとって本当にありがたいサービスだと痛感します。

ラウンジ内に一歩足を踏み入れると、そこには見渡す限りの広大な空間が広がっていました。VIP感漂う洗練された場所ですが、利用客は数えるほど。落ち着いた雰囲気のビジネス客ばかりで、観光客である若者の私は少し場違いなところに来てしまったのではないかと気後れするほどの静寂と高級感に包まれていました。

料理の品揃えも非常に豊富でしたが、なかでも嬉しかったのが本場のベルギービールを心ゆくまで堪能できたことです。特に写真一番左のベルギーを代表するビール「ステラ・アルトワ(Stella Artois)」は、驚くほど飲みやすく、ビール特有の苦味が苦手な方でもスルスルといけてしまう洗練された味わいでした。

さらに、醸造所Alken-Maesが手掛ける「Maes Radler(マース・ラドラー)」も絶品。こちらはビールをレモネードで割った低アルコールのビアカクテルなのですが、お酒というよりは爽やかな「サイダー」のような感覚で楽しめます。レモネードの甘みとビールのキレが絶妙にマッチして、旅の疲れが吹き飛ぶような軽やかさでした。

食事メニューで一番のお気に入りは、おかわりまでしてしまったチキンライス。広々とした贅沢な空間で、美味しい食事とベルギービール、そしてラドラーを楽しみながら旅の思い出に浸ります。

もし再びブリュッセル空港を訪れることがあれば、間違いなくリピートしたいと思える最高の場所でした。
入国
ベルギーへの入国は、驚くほどスムーズで拍子抜けするほどでした。ベルギーはシェンゲン協定加盟国なので、観光目的の短期滞在であれば日本人はビザなしで入国できます。
今回、ANAの直行便でブリュッセル空港に到着したのですが、飛行機を降りて空港スタッフの方に「ようこそ日本人!」と笑顔で声をかけられたのがとても印象的でした。直行便の到着に合わせて歓迎してくれているようですが、そもそも日本人には好意的な雰囲気も感じましたね。

イミグレーション(入国審査)も非常に簡素なものでした。
事前の情報では欧州で導入予定の次世代入国管理システム「EES(入国・出国システム)」が話題になっていましたが、訪れた時点ではまだ運用されておらず?従来通りパスポートに手作業で入国スタンプが押される形でした。

審査官たちは、隣のブースの同僚と楽しそうにくっちゃべりながら、まるでお喋りのついでかのようにポンポンとスタンプを押していきます。
こちらには質問一つ投げられることもなく、ものの数十秒で通過。その緩さというか、欧州らしいマイペースな空気感に、思わずベルギーに来たんだなと実感させられる入国体験でした。
街の様子
ブリュッセル
ベルギーの首都ブリュッセルは、EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)の本部が置かれた、まさに「欧州の心臓部」と呼ぶにふさわしい国際都市です。街のいたる所で多国籍な人々が行き交い、歴史的な建築物と近代的な国際機関が共存する独特の熱気に包まれています。
観光の目玉は何といっても「世界一美しい広場」と称されるグラン・プラスですが、そこから一歩路地に入れば、ベルギーを代表するチョコレートショップやB級グルメがひしめき合っています。
都会的な洗練さと、中世から続く伝統がカオスに混ざり合う様子は、歩いているだけで刺激をくれる不思議な魅力がありました。

グラン・プラス 世界遺産に登録されているこの広場は、黄金に輝くギルドハウスに囲まれた壮大な空間で、個人的には昼間の曇り空の下よりも、光り輝く夜のライトアップの方が圧倒的に美しく感じました。

サン・ミッシェル大聖堂 離れた場所からでもその姿を確認できますが、いざ近くまで行ってみると、空へ突き刺さるような二つの塔の巨大さと精緻な彫刻に、思わず言葉を失うほど圧倒されます。

ギャルリ・サンチュベール 美しいアケード内には老舗のチョコレート店が軒を連ねており、中には巨大なチョコレートを試食させてくれる太っ腹なお店もあって、甘い香りに包まれながら至福のひとときを過ごせます。

芸術の丘(モン・デ・ザール) 高台に位置するこの場所からは、手入れの行き届いた幾何学模様の庭園越しにブリュッセルの街並みを一望でき、天気が良ければ遠くに市庁舎の塔まで見渡せる絶好のフォトスポットです。でも残念ながらこの日は雨でした。天気には逆らえませんので。

小便小僧(マネケン・ピス) 「世界三大がっかり」の一つとして有名ですが、噂通り本当に小さく、そのあまりのサイズ感にかえって愛らしさを感じてしまうほどでした。

小便少女(ジャンネケ・ピス) 有名な小便小僧の「女の子版」として路地の奥にひっそりと設置されていますが、あまりにシュールな姿は、ある意味で本家以上の衝撃を受けました。

ブルージュ
ブルージュは中世の面影が奇跡的にそのまま残る、ベルギーで最もロマンチックな水都です。滞在中は曇り空が続いていましたが、この日は運良く快晴に恵まれ、青空に映える赤レンガの街並みを堪能することができました。
石畳を観光用の馬車がパカパカと音を立てて走る光景は、まさに思い描いていたヨーロッパそのものの世界観です。土曜日ということもあり、欧米各地から訪れた多くの観光客で街全体が活気に満ちあふれていました。
どこを切り取っても絵になる美しさがあり、今回のベルギー周遊の中でも間違いなくナンバーワンと言えるお気に入りの場所です。

マルクト広場と鐘楼 街のシンボルである高さ83メートルの鐘楼がそびえ立つ広場で、周囲を囲むカラフルなギルドハウスとのコントラストは、まさにベルギー観光のハイライトと言える絶景です。

べギン会修道院 かつて世俗の独身女性たちが共同生活を送った世界遺産の施設で、一歩足を踏み入れると外界の喧騒が嘘のような洗練された静寂が広がっていました。

愛の湖公園(ミンネワーテル) 運河の入り口に広がる静かな公園で、たくさんの白鳥が優雅に泳ぐ姿は、ブルージュが「おとぎ話の街」と呼ばれる理由を象徴するような穏やかな景色でした。

Albertの焼きたてワッフル ブルージュの散策中に立ち寄った「Albert(アルベール)」のワッフルは、今回の旅で出会った最高のご褒美でした。ベルギーにはサクサクのブリュッセル風と、もちもちのリエージュ風がありますが、ここのワッフルはまさに理想的な食感です。今回食べたのは、食べ歩きにも最適なリエージュワッフルでした。

アントワープ
アントワープは世界最大のダイヤモンド取引所と、ベルギー随一のファッション感度を併せ持つ、非常に洗練された都市です。今回は往復ブリュッセルからバスで訪れましたが、街の玄関口へ向かった瞬間、まるで宮殿のようなアントワープ中央駅の美しさに圧倒され、この街の美意識の高さを肌で感じました。
バロック絵画の巨匠ルーベンスゆかりの地としても知られ、歴史的な大聖堂には彼の最高傑作が今も大切に保管されています。
平日に訪れたこともあり、観光客よりも地元のビジネスマンや学生が多く、他の都市とは一線を画す落ち着いた都会的な空気感が漂っていました。伝統的な広場から珍しい木造エスカレーターまで、新旧の魅力がカオスに混ざり合う、魅力的な街のひとつでした。

アントワープ中央駅 「鉄道の大聖堂」とも称され「地球の歩き方」の最新号のの表紙を飾るほどの建築美を誇るこの駅は、一目見ただけでは駅とは思えないほどの圧巻の存在感でした。

聖母大聖堂(ノートルダム大聖堂) 「フランダースの犬」の舞台となった場所で、入場料は少々張りますが、内部に飾られたルーベンスの三連祭壇画はいずれも息を呑むほどの迫力に満ちていました。

ルーベンスの家 巨匠が実際に暮らし、アトリエとして使っていた邸宅で、今回は時間の都合で外から眺めるだけでしたが、その重厚な佇まいに当時の豪華な暮らしぶりが忍ばれました。

マルクト広場と市庁舎 周囲を囲むギルドハウスや壮麗な市庁舎は実に見事ですが、ブリュッセルのグラン・プラスと比べると、より落ち着いた静かな美しさが印象的です。

聖アンナトンネル(木造エスカレーター) 川の対岸へと続くトンネル内には、日本ではまず見ることのできないクラシックな木製のエスカレーターが今も現役で動いており、独特のレトロな雰囲気が楽しめました。

ゲント
ゲントは、重厚な中世の建築物と大学街としての活気が同居する、ベルギーでも独特な存在感を放つ古都です。
ブルージュからブリュッセルへの帰路に立ち寄りましたが、街自体が非常にコンパクトにまとまっており、主要なスポットを半日ほどで効率よく巡ることができました。
観光客向けに完璧に整備されたブルージュに比べると、地元の人々の生活感が心地よく、都市としての確かなエネルギーを感じます。今回は数時間という限られた滞在だったため、他の都市に比べると少し駆け足の訪問となりましたが、運河沿いの風景は一見の価値がありました。短時間でも中世の街並みのエッセンスを凝縮して楽しめる、旅のアクセントにぴったりの街です。

グラスレイとコーレンレイ 運河を挟んで歴史あるギルドハウスが向かい合う景勝地で、岸辺のテラスに座って水面を眺めるひとときは、短時間の滞在でも非常に記憶に残る美しいものでした。

聖バーフ大聖堂 ファン・エイク兄弟の傑作『神秘の仔羊』を所蔵する大聖堂として有名ですが、今回は時間の都合により、その重厚で歴史を感じさせる外観をじっくりと眺めるにとどめました。

ゲントの鐘楼 街のシンボルとして高くそびえ立つこの塔は、周囲の歴史的な街並みを見守るような圧倒的な存在感を放っており、ゲントがかつて誇った繁栄を象徴していました。

治安
ベルギーは外務省の危険情報は出ていないものの、ことブリュッセルに関しては、他の欧州都市と比較してもかなり注意が必要なエリアが存在します。

基本的には、観光の中心であり比較的落ち着いている「ブリュッセル中央駅」を拠点にすべきですが、他都市への鉄道や格安バスのハブとなっているのは「北駅」と「南駅」です。旅の行程上、どうしてもこの二つの駅を利用せざるを得ない場面が出てきます。

私は実際に深夜の北駅と早朝の南駅で乗り換えを行いましたが、そこには明らかな緊張感が漂っていました。深夜の北駅は、浮浪者やホームレスがたむろし、空気は殺伐としています。早朝の南駅も、決して安心できる雰囲気ではありません。落書きの多さや駅周辺の荒んだ空気感は、日本の主要駅とは全くの別物です。

特に不安を感じたのは、日本と違って「改札」がない点です。切符を持っていなくても誰でもプラットフォームまで入れてしまうため、駅構内での乗り換え中であっても常に背後に気を配る必要がありました。

また、リエージュでの経験は今でも忘れられません。ルクセンブルクへ向かう際、電車の遅延により急遽リエージュ駅で1時間ほど待機することになったのですが、そこは物乞いが徘徊し、執拗にお金をせびられるような物騒な環境でした。なんとかかわし続けましたが、あの1時間は恐怖を感じるほどでしたね。
一方で、日中に訪れたブルージュやゲント、アントワープでは、それほど治安の悪さを感じることはありませんでした。とはいえ、欧州では「夜間はできるだけ出歩かない」のが鉄則です。ブリュッセルの主要駅を深夜や早朝に利用する場合は、十分な警戒心を持ち、できるだけ短時間で移動を済ませるよう強くおすすめします。
ベルギー滞在でのハプニング
ベルギー滞在中で最も肝を冷やしたハプニングは、ルクセンブルクからの帰路に起きました。
その日のルートは、ルクセンブルク駅からリエージュ駅、ブリュッセル北駅を経由し、ホテル近くのDiegem駅を目指すというもの。しかし、折悪しく激しい雪に見舞われ、ルクセンブルクからの鉄道が大幅に遅延してしまったのです。乗り換えのリエージュ駅では、前述の通り物乞いが徘徊する物騒なプラットフォームで1時間以上の待機を余儀なくされました。寒さと恐怖に震えながら、ようやくブリュッセル行きの列車に乗り込んだものの、この時点でDiegem駅へ向かう終電はなくなり、絶望でした。

欧米では「自己主張をしなければ権利は守られない」という教訓を胸に、車内検札に来た駅員に必死に事情を説明しました。「この遅延のせいで終電に間に合わない、どうすればいいか」と粘り強く交渉したところ、駅員がどこかへ連絡を取ってくれ、「ブリュッセル北駅に着いたら駅員に話しかけてみてくれ」と告げられました。

しかし、あの治安の悪い北駅に深夜、果たして駅員がいるのか。もし誰もいなければ、殺伐としたブリュッセル北駅で一夜を明かすor高額なタクシー代を自腹で払いホテルへ戻る(タクシーを拾うのに駅の外に出ることになりそれも危険)。最悪のシナリオが頭をよぎりました。

北駅に到着後、深夜の静まり返った構内を足早に歩き、必死にスタッフを探しました。ようやく最終電車を見送っていたスタッフを見つけ、事情を話すと、屈強なセキュリティガード4人に囲まれる形に。一瞬身構えましたが、彼らも北駅周辺がどれほど危険かを十分に把握していました。粘り強い交渉の結果、なんとタクシー代が無料になるバウチャーを発行してもらえることになったのです。

漆黒の闇の中、タクシーで無事にホテルへ帰り着いたときは、心底安堵しました。今回の件で痛感したのは、予期せぬトラブルに見舞われた際、黙って受け入れるのではなく、自分の状況を毅然と主張することの大切さです。ベルギーの地でなんとかなったのは、諦めずに声を上げ続けた結果でした。

まとめ
ベルギーは、EU本部が置かれる欧州の中心地としての機能と、中世の面影を残す街並みが共存する国です。主要都市は鉄道で1時間圏内にまとまっており、ブリュッセルを拠点に、運河の街ブルージュや芸術の街アントワープを効率よく周遊できました。

一方で、主要駅には改札がなく誰でもホームに立ち入れるため、深夜の北駅や南駅では浮浪者が目立つなど治安面での緊張感があったのも事実です。中央駅でさえ、停車中の列車に激しい落書きが施されている光景には驚き、日本の常識とは異なる現地の治安レベルを肌で感じました。

そのため、滞在中は常に周囲に気を配るなどの事前対策を徹底し、大雪による遅延トラブルに見舞われながらも、大きな被害なく無事に旅を終えることができました。

今回の旅では、歴史的な円安と現地の物価高を考慮し、コストを抑えるところと、お金をかけるところを明確に分ける「選択と集中」を意識しました。例えば観光地では、すべての施設に入るのではなく、フランダースの犬の舞台である聖母大聖堂など、どうしても見たい場所に絞って入場料を支払いました。

食費についても、街中での外食は控えめにし、その分プライオリティパスを活用して、空港の「The View Lounge」などでベルギービールや料理を心ゆくまで堪能しました。ラウンジで提供されるステラ・アルトワやサイダーのようなマース・ラドラーは、財布を気にせず本場の味を楽しめる貴重な機会となりました。

もちろん、現地ならではの食体験も忘れられません。ブルージュで食べた焼きたてのリエージュ・ワッフルは旅の最高のご褒美となりましたが、アントワープの「N1 Frituur」で食べた名物フリッツでは、苦い経験もしました。間違えて値段の高いビーフシチューソースを頼んでしまったのですが、ソース代だけで5.8€(約1000円)もしたことには、円安の影響もあって正直衝撃を受けました。

自分の主張を伝えてトラブルを打開する厳しさと、それ以上に美しい景色や食に出会える喜び。限られた予算のなかで工夫を凝らし、自らの足で歩いたベルギーの旅は、何物にも代えがたい経験となりました。
